叱らず伝わる!楽しくルールを作る親子の交渉術

 子育ての毎日では、「ゲームはもう終わりにして」「宿題が先でしょ」といったやり取りがよくあります。つい感情的になってしまったり、子どもが反発して大きなケンカになってしまったりして、後から後悔したり、「どうしたらうまく伝わるのだろう」と悩むことも少なくありません。

 実は、ルールを一方的に押し付けるよりも、親子で一緒に考えて決めることで、子どもはぐっと納得しやすくなり、自分から守ろうとする気持ちも育ちます。今回は、親子で交渉しながら楽しくルールを作るためのコツをご紹介します。

1. 子どもの気持ちを聞く

 子どもとルールを話し合うとき、最初に大切なのは「子どもがどう思っているか」をきちんと聞くことです。「もっとゲームをやりたい」「宿題は後でやりたい」など、子どもなりの思いや考えがあります。大人が先に「こうしなさい」と決めるのではなく、「どのくらい遊びたいと思っている?」と問いかけることで、子どもは「自分の気持ちが尊重された」と感じ、交渉の場に前向きに参加しやすくなります。

2. 子どもが選べる形にする

 一方的に「ダメ」と言ってしまうと、子どもは反発しやすくなります。そこで、子どもが選べる形でルールを提案するのが効果的です。たとえば、「ゲームは30分にする? それとも45分にしてから宿題をやる?」と、あらかじめ親が許容できる範囲で選択肢を出します。 

 親が決めたことを押し付けるのではなく、子どもが「自分で選ぶ」形にすることで、ルールを受け入れやすくなります。小学生以上であれば、現実的な案を子どもに考えてもらう方法も有効です。スケジュール管理や見通しを持つ力の育成にもつながりますし、「自分の意見を聞いてくれている」という実感にもなります。

3. 理由をきちんと伝える

 人は「なぜそうしなければならないのか」がわからないと、不満を感じやすいものです。「もうテレビやゲームは終わり」ではなく、「これ以上夜遅くなると、明日学校で眠くなって授業に集中できないから、今日はここまでにしようね」と理由を添えることで、子どもは納得しやすくなります。

 ルールを守ることが「親の都合」ではなく「自分の生活や健康のため」だと理解できるように伝えることが大切です。理由を伝えても納得しないことはあります。そのときは、子どもの気持ちを受け止めながら、根気よく説明を続けましょう。

4. タイマーや見える仕組みを使う

 言葉だけで「あと30分ね」と約束しても、時間の感覚がまだ未熟な子どもにはわかりにくいことがあります。夢中になっていて気づかないこともあります。そこで、タイマーや時計を使って「時間が来たら音で知らせる」といった仕組みを取り入れると効果的です。

5. ルールは紙に書いて家族で共有する

 一度話し合って決めたルールは、紙に書いて見えるところに貼っておくと効果的です。リビングの壁などに、「ゲームは1日1時間まで」「テレビは宿題が終わってから」などと明記します。

 口約束だけだと、言った言わないの水掛け論になりがちです。みんなで話し合って決めたルールとして、いつでも確認できるようにしておきましょう。家庭の中で「みんなで守る約束」として見える化することで、子どもは「ルールを守ろう」という気持ちになりやすくなります。

まとめ

 家庭のすべてを細かくルール化してしまうと、子どもも大人も窮屈に感じます。本当に必要なことだけをルール化するのがおすすめです。家庭でのルール決めや交渉の時間は、親子の大切なコミュニケーションの時間でもあります。やり方そのものも楽しんでみてください。子どもがうまい代替案を提案してきたときは、まさに成長の証です。

この記事を書いた人

松山東雲女子大学准教授

鏡原崇史氏

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広島大学大学院修了(博士〈教育学〉・公認心理師)。専門は発達心理学および特別支援教育。 療育施設で障がいのある子どもの支援に携わったのち、発達段階に応じた支援法や療育プログラムの開発に取り組む。 現在は松山東雲女子大学で保育士・幼稚園教諭養成の科目を担当しながら、保育所・幼稚園・こども園や小学校などを巡回し、 子どもたち一人ひとりの発達に即した助言や支援を行っている。 愛媛県特別支援教育専門家チーム委員、松前町子ども・子育て会議委員も務める。