「愛着」と「主体的な学び」の関係性

 今回は、子育てを考えるうえで必ずと言っていいほど登場するキーワード「愛着」と、その愛着が後の学びにどのような影響を与えるのかについて解説します。

愛着とは?

 特定の人に対する特別の情緒的な結びつきのこと愛着と言います。
 愛着形成にとって特に大切なのは0〜2歳頃で、この時期に、保護者や身近な大人が一貫して子どもの気持ちに寄り添い、安心感を与えることで、子どもは「この人は自分を守ってくれる」という信頼を育てていきます。

探索行動とは?

 愛着が形成されていくに伴い、子どもは徐々に探索行動ができるようになります。探索行動とは、簡単に言えば「自分から周りの世界を見てみよう」「触ってみよう」とする行動のことです。例えば、赤ちゃんがハイハイで少し離れたおもちゃに向かったり、幼児が公園で気になる場所を探検したりする行動が当てはまります。

 こうした行動は、すべて「安心できる大人がそばにいる」、「困ったこと、不安なことがあれば助けてくれる」という前提があるからこそ生まれるものです。心理学では、信頼できる大人の存在を「(安心・安全)基地」と呼びます。子どもは基地があるからこそ、外の世界に自ら踏み出せるのです。

探索行動と主体的な学び

 探索行動が増えるということは、主体的に行動できる時間や機会が増えていくということでもあります。遊びの中でみられる主体的な姿は、後の「主体的な学び」に繋がる基盤でもあります。興味を持ったことを試してみる、失敗してももう一度挑戦するといった学習の姿勢は、幼少期の安心感と探索行動の積み重ねによって育まれます。つまり、愛着形成は勉強にとっても非常に重要な役割を果たしているのです。

 愛着形成には、日常的な情緒的関わりが不可欠です。子どもの気持ちに寄り添い、「あなたは大切な存在」というメッセージを日々の関わりの中で伝えていくことが大切です。このような関わりは、乳幼児期だけではなく、小学生以降も続けてほしい関わりです。こうした関わりの積み重ねが、子どもが自分の世界を安心して広げていくための一番の土台になります。

 「あなたは大切な存在」という気持ちを記録として残すアイテムとして、「マイルストーンカード」や「メモリアルブック」、「エコーフォトアルバム」、「身長計」などがありますので、よかったら活用してみてください。

この記事を書いた人

松山東雲女子大学准教授

鏡原崇史氏

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広島大学大学院修了(博士〈教育学〉・公認心理師)。専門は発達心理学および特別支援教育。 療育施設で障がいのある子どもの支援に携わったのち、発達段階に応じた支援法や療育プログラムの開発に取り組む。 現在は松山東雲女子大学で保育士・幼稚園教諭養成の科目を担当しながら、保育所・幼稚園・こども園や小学校などを巡回し、 子どもたち一人ひとりの発達に即した助言や支援を行っている。 愛媛県特別支援教育専門家チーム委員、松前町子ども・子育て会議委員も務める。