「イヤイヤ期」は成長のサイン!困った行動の背景にある「自我の芽生え」とは?

 いわゆる「イヤイヤ期」は、1歳半~3歳頃に多く見られる発達上の現象です。この時期の子どもは、何に対しても「イヤ!」と言うことが増え、保護者が対応に悩む場面も少なくありません。一般的には「イヤイヤ期」と呼ばれていますが、専門的には「自我の芽生え」や「自我の拡大」の時期と言います。

「イヤイヤ期」の行動の特徴

 この時期には、日常のさまざまな場面で保護者を困らせる行動が見られます。たとえば、着替えの際に「この服はイヤ!赤いのがいい!」と言ったり、ご飯のときに「これじゃない!」と拒否したりすることがあります。説得しようとしても泣き叫んだり、物を投げたり、癇癪を起こすこともあり、外出先で困り果てた経験のある保護者の方も多いのではないでしょうか。

「イヤイヤ期」の行動の理由

 もともと曖昧だった「自分」と「他者」の区別が発達とともにはっきりし、「自分」という存在を意識するようになります。その結果、「自分でやりたい」「自分の思い通りにしたい」という気持ちが強まり、大人の提案に対して「イヤ!」と答えるようになります。これは自己主張のサインであり、発達においてとても重要な過程です。

「イヤイヤ期」の子どもとの関わり方

1.子どもの気持ちを受け止める

 子どもはまだ十分に気持ちを言葉で伝えることができません。「イヤだったね」「自分でやりたいんだね」と代弁し、受容的・共感的姿勢で関わることで、子どもは「わかってもらえた」と安心することができます。

2.選択肢を用意する

 「自分で決めたい」という気持ちが強い時期です。一方的に大人が決めるのではなく、「赤い服と青い服、どっちがいい?」のように選択肢を示すことで、子どもが自分で決める体験を保障できます。

3.安全な環境で「自分でやる」経験を保障する

 「自分でやりたい」という思いはあっても、まだ上手にできないことも多くあります。全部を大人が代わりにするのではなく、できる部分を少しでも子どもに任せることで、「できた!」という成功体験につながります。この成功体験を積み重ねることで、自己肯定感を高めることができます。

4.大人が冷静に関わる

 繰り返し「イヤ!」と言われると大人も感情的になりがちですが、深呼吸をして「これは発達に必要な一時期」と捉えることが大切です。大人が落ち着いて関わることで、子どもも安心し、気持ちを切り替えやすくなります。

この記事を書いた人

松山東雲女子大学准教授

鏡原崇史氏

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広島大学大学院修了(博士〈教育学〉・公認心理師)。専門は発達心理学および特別支援教育。 療育施設で障がいのある子どもの支援に携わったのち、発達段階に応じた支援法や療育プログラムの開発に取り組む。 現在は松山東雲女子大学で保育士・幼稚園教諭養成の科目を担当しながら、保育所・幼稚園・こども園や小学校などを巡回し、 子どもたち一人ひとりの発達に即した助言や支援を行っている。 愛媛県特別支援教育専門家チーム委員、松前町子ども・子育て会議委員も務める。