「ごめんなさい」が言えないのはなぜ? ー子どもが謝るために必要な心の力ー

「ごめんなさい」が言えない

 友達のおもちゃを取ったり、けんかをして叩いてしまったりした時、「そんなことしていない!」「僕は悪くない!」と言い、素直に謝ることができないことがあります。そんな姿を見ると、「素直に謝れない子になったらどうしよう」「無理やりでも謝らせた方がいいのかな」と悩んだ経験はありませんか?実は子どもにとって、「謝る」という行為は、大人が思っている以上に心の力を必要とするものなのです。

謝ることは、自分の間違いと向き合うこと

 「ごめんなさい」と謝るためには、まず「自分にも悪いところがあった」と認める必要があります。自分の間違いを認めると、「怒られるかもしれない」「嫌われるかもしれない」といった、さまざまな嫌な気持ちが生まれることがあります。
 大人でも、自分の失敗を素直に認めるのは難しいものです。自分の間違いを認められず、なかなか謝ることができない大人もいます。そのことを考えると、まだ自分の気持ちをうまく整理する力が育っている途中の子どもであれば、なおさらです。「僕は悪くない!」「相手が先にやった!」という言葉も、自分の中に生まれた不安や嫌な気持ちが大きく、自分を守ろうとする、ある種の防衛反応として出ることがあるのです。

安心できる関係があるからこそ、間違いと向き合える

 子どもが自分の間違いと向き合うために大切なのが、「間違えても、自分は受け止めてもらえる」という安心感です。もちろん、悪いことをした時には、してはいけないことをきちんと伝える必要があります。しかし、子どもの行動には、その子なりの理由や気持ちがあります。例えば、「おもちゃを取られて嫌だったんだね。でも、叩いたことはよくなかったね」と、その時の気持ちを受け止めたうえで、してはいけない行動をきちんと伝えることが大切です。

 トラブルが起こったとき、子どもの心の中には、強い不安や嫌な気持ちが生まれています。まだ感情を調整する力が十分に育っていない子どもにとって、その大きな嫌な気持ちを一人で処理することは簡単ではありません。しかし、大人に気持ちを受け止めてもらうことで、大きな嫌な気持ちは少しずつ小さくなっていきます。嫌な気持ちが小さくなれば、自分でもコントロールしやすく、自分のしたことと向き合いやすくなります。

 このように、失敗したり間違えたりしたときに、自分の気持ちを受け止めてもらう経験を重ねることで、子どもは少しずつ自分で感情を調整する力を育てていきます。同時に、「間違いを認めても大丈夫」「失敗しても、この人との関係はなくならない」という安心感も育っていきます。こうした人との関係の中で育まれる安心感があるからこそ、子どもは自分の間違いから目をそらさず、「自分も悪かったかもしれない」と向き合えるようになるのです。

 「ごめんなさい」が言えないとき、その一言を急がせる前に、まずは子どもの嫌な気持ちを大人が受け止め、少し和らげてあげる。そして、子どもが自分の間違いと向き合えるような安心できる関係を、日頃から築いていく。そんな視点も大切なのかもしれません。

 

この記事を書いた人

松山東雲女子大学准教授

鏡原崇史氏

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広島大学大学院修了(博士〈教育学〉・公認心理師)。専門は発達心理学および特別支援教育。 療育施設で障がいのある子どもの支援に携わったのち、発達段階に応じた支援法や療育プログラムの開発に取り組む。 現在は松山東雲女子大学で保育士・幼稚園教諭養成の科目を担当しながら、保育所・幼稚園・こども園や小学校などを巡回し、 子どもたち一人ひとりの発達に即した助言や支援を行っている。 愛媛県特別支援教育専門家チーム委員、松前町子ども・子育て会議委員も務める。