学校に行き渋るとき、何を基準に判断すればいい?

Q. 「学校行きたくない」と行き渋ることが。子どもに寄り添いたいと思いつつ、何を基準に判断すればいいのかわかりません。

A. じっくり話を聞いて、行きたくない理由を知ることが大切です。

「めんどくさいから」「授業がわからないから」「友達とけんかしたから」「いじめられているから」、子どもが学校に行きたくない理由は、本当にさまざまです。中には、「理由はわからないけれど、学校に行こうとするとお腹が痛くなる」と話す子もいます。

そんなときは、無理に行かせようとせず、まずは子どもの気持ちに寄り添って、じっくりと話を聞く機会をもってみてください。話すうちに、学校に行きたくない理由が少しずつ見えてくることもあります。
明確な判断基準を設けるのは難しいですが、心や体に不調のサインが出ている場合は、無理に登校させることは避けた方がよいでしょう。

「学校に行かなくてもいい」という言葉の本当の意味

最近では、「行きたくなければ学校に行かなくていい」という言葉を、ネットやSNSなどで見かけることも増えてきました。たしかに、心身に不調がある場合には、一時的に学校を休むことも大切な選択肢です。一方で、学校には、友達との関わりや、部活動、文化祭、体育祭といった学校ならではの体験があります。こうした経験は、子どもが成長していくうえでの学びにつながったり、人生の大切な思い出になったりするものです。
「学校に行かなくてもいい」と、簡単に口にする大人もいますが、その言葉を言う人の多くは、その子の将来について責任をとってくれるわけではありません。だからこそ、この言葉の意味をしっかりと受け止める必要があります。「学校に行かなくてもいい」という言葉の本当の意味は、「学校よりも命や心身の健康のほうが遥かに大切」ということだと理解し、私はこの言葉を使うようにしています。決して、学校での学びや経験に意味がないということではありません。

「学びの環境の調整」という選択肢

私が子どもや保護者の方から相談を受けた際には、完全に登校をやめてしまうのではなく、子どもの状態に応じて、登校の仕方や学びの環境を調整してみることから始めます。例えば、座席の位置を変更する、午前中だけ登校する、特定の授業だけ別室で受けるなどです。どうしても学校に行けない場合は、教育支援センター(適応指導教室)や、民間のフリースクールを活用する方法もあります。これらの場所では、個人のペースに合わせた学びや支援が受けられるため、本人の安心感や自信を取り戻すきっかけにもなります。

保護者が一人で抱え込まないことも大切

いずれの方法をとるにしても、子ども本人の気持ちを大切にしながら、学校とも連携して考えることが大切です。まずは、子どもの話をしっかり聞き、必要に応じて担任の先生や学校に相談してみましょう。
保護者だからといって、すべてを一人で抱え込む必要はありません。学校には教育の専門家である先生がいますし、心理の専門家であるスクールカウンセラーも配置されています。家庭と学校が連携し、子どもを支えていく体制を一緒に整えていきましょう。

この記事を書いた人

松山東雲女子大学准教授

鏡原崇史氏

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広島大学大学院修了(博士〈教育学〉・公認心理師)。専門は発達心理学および特別支援教育。 療育施設で障がいのある子どもの支援に携わったのち、発達段階に応じた支援法や療育プログラムの開発に取り組む。 現在は松山東雲女子大学で保育士・幼稚園教諭養成の科目を担当しながら、保育所・幼稚園・こども園や小学校などを巡回し、 子どもたち一人ひとりの発達に即した助言や支援を行っている。 愛媛県特別支援教育専門家チーム委員、松前町子ども・子育て会議委員も務める。