ちぎる音からはじまる、つくる時間。園で楽しんだ「はじめてのペーパープレイブック」

こんにちは。スタッフ高橋です。

今回は、松山しののめ認定こども園で「はじめてのペーパープレイブック」を子どもたちに楽しんでもらった様子をお届けします。

この日は、あいにくの雨模様でした。
2月25日、しとしとと降る雨の音のなか、保育室には39人の年長さんが集まっています。

前の机には、車やアイス、ライオンなどのモチーフが並んでいます。
これからはじまるのは、紙を「ちぎって」「貼って」楽しむ時間です。

この日、発達心理学や教育学を専門とする教育学博士・公認心理師の鏡原崇史先生とともに開発した「はじめてのペーパープレイブック」を、年長クラスで楽しんでもらう機会をいただきました。

当日の進行は、いつも子どもたちと向き合っている園の先生方。
私たちスタッフは、保育室の後ろからその様子を見守り、時々言葉を交わしながら、その時間にそっと寄り添いました。


はさみを使わない工作ブック「はじめてのペーパープレイブック」

今回子どもたちに楽しんでもらった「はじめてのペーパープレイブック」は、鏡原崇史先生と開発した、はさみを使わない工作ブックです。

身近な題材(食べもの・動物・乗りものなど)の21種類の工作モチーフと、和紙・薄紙・厚紙など感触の異なる12枚のちぎり紙をセット。
中には少しちぎりにくい紙もありますが、それも紙ごとの違いに気づくきっかけになればという小さな工夫です。

ちぎる、折る、貼る。
そんな指先を使った遊びを通して、

・感覚
・手指操作
・非認知能力

という、子どもの発達に大切とされる3つの視点を大事にしながらつくりました。

見本通りでなくても、はみ出しても、ずれても大丈夫。
子ども自身の自由な表現を楽しめるよう、正解のない工作です。


ちぎる音からはじまる、子どもたちの制作時間

制作の前に、先生が子どもたちへ説明します。

「いつもは、ちぎり絵もはさみを使ってつくることがあるよね。今日は、はさみは使いません。紙をちぎってつくります」

前の机に置かれたモチーフをひとつ手に取りながら、先生は見本をつくります。

「先生はチョコレートケーキにしてみようかな」

さらに紙を見せながら

「紙はいろいろあるよ。つるつる、ざらざら、すべすべ。どれを使ってもいいからね。前に8種類のモチーフがあります。好きなものをひとつ選んでください」

説明が終わると、子どもたちは前の机へ。

ライオン、人、空、花、木、車、アイス、額縁——。
それぞれ好きなモチーフを選びます。

モチーフを手に自分の席へ戻ると、いよいよ制作スタート。
保育室のあちらこちらに、紙をちぎる音が広がります。

びりっ、と大胆に破る子。
指先で細かくちぎる子。
じっくり紙を眺めてから、ゆっくり手を動かす子。

同じモチーフでも、向き合い方はそれぞれでした。
すると、ある子がうれしそうに声を上げます。

「先生、みて! まっすぐちぎれた!」

先生が笑顔で聞き返します。

「すごいね!どうやったらまっすぐ切れたの?」
「はやくしたら!」
「なるほどね。ゆっくりじゃなくて、ぴーっとやぶるのがいいんやね」

そのやりとりを聞いていた近くの子も、「先生、〇〇ちゃんのもみて!」。
保育室はあっという間に「先生、みて!」のオンパレード。

制作が進むにつれて、友だち同士の声も増えていきました。

「見て! めっちゃいい髪型できた!」
「いいやん!めっちゃいい!」

思わず笑ってしまうような、素直な反応。

床の上には、ちぎった紙がどんどん増えていきます。

そんな紙を見つめて、
「いいこと考えた!」と、ちぎって残った紙で新しい形をつくりはじめる子も。

正解を探す時間ではなく、「思いついたことを試してみる時間」が、自然と広がっていました。



子どもたちの想像は、モチーフを越えていく

私たちが思いもしなかった表現も生まれていきました。
人の顔のモチーフに、青い紙を貼っている子がいました。

鏡原先生がやさしくたずねます。

「これ、なあに?髪の毛?」

すると、子どもはきっぱり答えました。

「お花!」

また別の子は、車の車輪をロケットに見立てて貼っています。

鏡原先生は、そんな様子を見ながらこう話しました。

「モチーフは、あくまできっかけなんです。子どもたちにとっては、そこから自由に広がっていくものなんですね」

制作の進め方にも違いがありました。

紙をちぎる段階で形を考えている子。
貼りながら形をつくっていく子。

アイスのモチーフでは、

「ソーダ!」
「チョコ!」
「みかん!」

紙の色から味を想像している子もいました。
同じモチーフでも、できあがる作品はひとつとして同じものがありません。


手を動かしながら、子どもたちは考えている


制作の様子を見ながら、鏡原先生が静かに話しました。

「今、手を動かしながら考えていますね。こういう時間が、とても大切なんです」

ちぎる。
貼る。
少し迷う。
やり直す。
また貼る。

そのひとつひとつの動きが、子どもたちの思考とつながっています。


園の先生が感じた、モチーフのある制作の良さ

園の先生にもお話を聞きました。

「普段は真っ白の画用紙から制作することが多いんです。子どもそれぞれがイメージしたものをつくる形ですね」

その一方で、

「今日のように、アイスや車輪など少しモチーフがあると、普段はなかなかイメージが浮かばない子も、すっと手が動き出すことがあります」

同じ車のモチーフでも、トラックにする子、道路や信号をつける子。
それぞれ違う表現が生まれていました。

「ちぎって、あららとなっても、それをどうにか使おうとする姿もありました」

その言葉が、とても印象に残りました。


ひとつひとつの作品に寄り添う先生の声

また、園の先生の関わり方も印象的でした。
思った通りにできず、泣きながら先生のところへ来た子に、先生はこう声をかけます。

「大丈夫」
「紙を持っておいで」
「先生と一緒にやってみよう」

子どもを突き放すのではなく、でも答えを与えすぎるわけでもなく、そっと寄り添うような関わり方でした。

制作が終わると、子どもたちは作品を先生のところへ持っていきます。

「〇〇ちゃん、これ、どっち向き?」

先生は作品の向きを子どもと一緒に確認しながら、そっと名前を書き入れていました。

額縁のモチーフを使って自由に制作していた子には、こんな言葉をかけます。

「わあ、いいね。◯◯ちゃんの素敵なセンスだね」

そして作品を一緒に眺めながら、
「お部屋に飾ったらいいね」と、にっこり。

完成した作品を大切に扱うその姿も、とても心に残る光景でした。



ご家庭での“つくる時間”へ

39人の保育室で広がった“つくる時間”。
けれど、それは特別なものではなく、きっとどのご家庭にもある風景だと思います。

テーブルの上に、はじめてのペーパープレイブックを広げて、「今日はどれをつくる?」とモチーフを選ぶ。
ちぎった紙が机に広がり、笑ったり、ちょっと困ったりしながら、また手を動かす。
そんな時間が、きっとそれぞれの家庭に生まれていくのだと思います。

「どうしてそう思ったの?」
「もう一回やってみる?」

そんな会話をしながら、親子で過ごす“つくる時間”。
このブックが、そんなひとときのきっかけになればうれしいです。


■次につながるヒント

実は、このはじめてのペーパープレイブックには続編の構想もあります。
今回、子どもたちの姿からたくさんのヒントをもらいました。

どんなモチーフが心を動かすのか。
どんな紙が想像を広げるのか。
どんな余白があると、より自由に表現できるのか。

保育室で広がった“つくる時間”は、私たちにとっても新しい発見の連続でした。

これからも、子どもたちの創造の時間にそっと寄り添えるようなものづくりを続けていきたいと願っています。


■今回ご紹介したアイテム
はじめてのペーパープレイブック ¥2,970 税込